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つれづれなるままに

最高の家出

最高の家出見てきました。

ネタバレありでもろもろ書いていきます。

 

【あらすじ】
結婚生活に疑問を感じ、家出をした立花箒たちばなほうき(高城れに)。
 道中、無一文になり途方に暮れていたところ、出会った藤沢港ふじさわみなと(東島京)に「住み込みの働き手を探している劇場がある」と聞き、劇場を訪れる。そこで与えられたのは、舞台上に作られた“模造街”で、ある役を演じる仕事だった。
この劇場ではたった1人の観客のために、7ヵ月間をかけてひとつの物語を上演しているのだが、港が家出したせいで、箒は代役を務めるハメに。
 舞台の主演蒔時アハハまきときあはは(祷キララ)は「相手役が変わるならやらない」とゴネるが、物語の幕は上がり、箒とアハハはチグハグな関係のまま芝居を続ける。
演劇と現実の区別がつかなくなった男、眠りを忘れて働き続ける裏方、舞台上だけ雄弁な言葉を失った俳優。箒は奇妙で愉快な面々に振り回されながら、次第に劇場での暮らしに心地よさを覚え、アハハとの友情を深めていく。
 そんなある日、劇場に箒の夫・向田淡路むこうだあわじ(尾上寛之)が現れ、さらに港も戻ってきて、“模造街”の秩序が崩れはじめる……。
 舞台上と舞台裏、それぞれの”家出”が重なり合って生まれる、ファンタスティック迷走ストーリー!

公式サイト(最高の家出 | PARCO STAGE -パルコステージ-)より

 

すくなくとも、模造街の人たちに会えて、一歩踏み出して良かったね、箒!

最高の家出だったね!みたいな物語ではないと思った。

 

箒が劇団に居場所を見つけていく中で、だんだんと違和感というか奇妙な点が出てきます。

アハハは劇場が現実で外の世界には何もないと感じている。

背中はだんだんと現実と役が混在していって、

何回も上演する舞台なのに自分がループに巻き込まれていると

勘違いするようになっている。

 

淡路が来たあたりから、

徐々にキャラクターも崩れていって、足鳥は自分の本当の性格を出すようになっていった。

ただ、この淡路が来て、足鳥が変わっていったあたりですごく違和感というか

怖さや気持ち悪さを感じていて。

この人たち、本当は何なんだろう。

この先どうなっていってしまうのだろう。

どうしてこんなに違和感なく笑いながら淡路を受け入れているのだろう。

(あと、秩序を守るためとはいえ監禁する夏太郎ってぶっとんでんな)

 

私はあの劇団はぴったり8人でなくてはならず、

各キャラに各演者という法則があるのかなと思ったので、

淡路が静男になる、と聞いたときは箒が他のものになってしまうのでは…、

入れ替わりになるのでは?という不安もあった。

アハハが語る港の「あぁ」と足鳥の返事までの長さのエピソードが同じだったので、

なんか、何かが入れ替わったのかなとか。

 

現に港が戻ってきたときにたまたまテレカが出て行ってしまうから、

港がテレカになり変わってしまうのでは?とも。

 

最終的に、自分にとっての箱庭から脱出しよう、と劇団から逃げ出すのだけど。

最後の珠子と静男の会話は、どっちだったんだろう。

箒とアハハの最後の演技ともとれるし、実際は天国で実際にあっている珠子と静男なのかもしれないなと。

 

足鳥が「リアクションにかなり時間がかかるだけなのに身軽が俺の気持ちを先走って言ってしまう」というのは、

前半でアハハが「港は2時間経って「あぁ」とだけ言うの。でもそのあぁには情熱的な感情が込められていてね…!」と言っていたのとリンクしたから

港が元は足鳥で?とか考えてしまって、

私が感じた気持ち悪さってここにあったのかもしれない。

ただ「アハハはちゃんと港の反応を待っていたのに、足鳥は待ってもらえなかった、それが不満だった」だけ例だったのかな。

それでも、アハハは港の「あぁ」を自分に都合のいいように解釈していて、そんな港がかっこよくて好きだったのかもしれない。

あと、実際に港はそんな風に返事をため込む人だったのかなというのもある。港が演じる静男に恋をしていたのかもしれない。

箒演じる静男と出会って、本当の港が戻ってきて、夢から醒めてしまったのかもしれないね。

途中で静男の衣装が変わったのも、箒としての静男に変わったのかもしれない。

 

しかし、身軽は「兄貴はセリフのまましか話せない超マニュアル人間だ!」と言っていたけど、

あれもまた最後まで足鳥のことを理解できなかったのね。とも思ったなぁ。

 

淡路が「俺ならもっとうまくできる」って

どんどんとお芝居の演出とかセリフを変えてっちゃうの、

知らないとはいえ珠子さんの箱庭を壊してくんだから、無粋すぎる笑

 

そうか、初回はすごい奇妙なパラレルワールドだと思ってしまったんだけど

同じエピソードに対するアハハの港への解釈、

身軽の足鳥への解釈の差異を表現していたのかもしれない。

 

一番現実を見ていて、逃げ出しはしないけど現実と劇団のいいとこだけ吸ってしまおう、

としていたのがテレカさんだったのかな。

背中はループにとらわれてしまった、と考えている時点で多分何かが壊れてしまったんだと思う。

 

主人公、という目で見てしまったけど

箒が家出先で勇気をもらった、とかではなく、

家出先(模造街)の人々が箒と淡路という外からの異分子によって

家出(逃避)先から脱出する、という方が近いのかな。

 

三浦さんの言う家出は失敗ありきであるとすると、

珠子の家出は成功してしまったんだろうけど、その成功は幸せではなかった。

失敗していた場合の「もしも」を考えて、その世界に逃げ込んでしまった。

 

夏太郎は珠子さんに対して初めは同情かもしれないけど、

7ヶ月間の舞台を上演し続けることで

珠子さんを閉じ込めて、

アハハにも真実を伝えないことでアハハを閉じ込めて、役者も閉じ込めて

結果的に誰よりもそこに執着してたね。

 

もうちょっと咀嚼したいと思います。

 

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商店街で会ったテレカさんと背中と夏太郎は誰なんだろう。

ぬりえさんはほんとうに存在したのか

夏太郎、背中、港はあのまま残っていたのか

 

しかし、全体的に登場人物に現実感がなくて

この人たち、実在したのかなぁ。みたいな気持ちもぬぐえない。

(死んだんじゃないのかなとか)